AI×スクラッチでどんなことができるかな

学習活動の概要

単元の目標

AIに画像認識をさせ、Scratchのプログラミングを体験し、人工知能(AI)が実際に世の中で活用されている事例を見たり、簡単なAIの機能に触れてみたりすることで、これまでの情報技術とはどう違うのか、どのようなことが可能になったのかを理解する。また学校や地域、自宅を対象としてAIで解決できそうな課題を見付け、身の回りの課題をAIで解決する実践を行う。このように情報技術を活用しながら実践する力を育成し、AIやプログラミングを慣れ親しみながら体験し、現在や将来の生活でどのように活かすことができるか考えようとする。

【知識及び技能】
身近な生活にAI・コンピュータが活用されていることや問題解決には必要な手順があることに気付く。
自分が意図するプログラムを考え、プログラミングすることができる。
AIと従来のコンピュータの特徴の違いを理解する。
AIの特徴を理解し、AIに画像認識させ学習をさせることができる。

【思考力,判断力,表現力等】
自分が意図する活動を実現するために、必要な動きの組合せを考えることができる。
一つ一つの動きに対応した記号の組合せを改善させ、より意図した活動に近づけるように論理的に考えていくことができる。

【学びに向かう力,人間性等】
身の回りで使われているAIに興味をもち、すすんでコンピュータの働きを活用して、よりよい生活や社会づくりに生かしていこうとする。
自分の考えをもつと共に、他者と協力したり話し合いをしたりして、課題解決をしようとする態度を養う。

単元や題材などの学習内容

【探究課題】
 情報技術の進展によりAIが身の回りの生活にどのような影響を与えているか探ろう。

本単元においては、身の回りでAIが活用されている事例に目を向け、その仕組みを体験的に知ることや開発者の思いを知ることで、自分たちの生活にもたらされる影響やこれからの技術の応用の可能性を考えることができるようにする。

AIを使った課題解決が行えることを知ることで、自分たちの身の回りの生活に目を向けて、課題解決を行えることに気付き興味関心をもって探究的に学習を進める。また、これからより高度に情報化されていく社会において、自分たちがその社会構築に寄与できる実感をもち、自己の生き方に反映していけるようにする。

プログラミング体験の関連

本単元は、学習指導要領第5章総合的な学習の時間第3の2(9)後段部分「第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には、プログラミングを体験することが、探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること。」に基づき指導するものである。

身の回りでAIが活用されている事例を知ることだけではなく、実際にプログラミングの体験を通じて、興味関心が高まり、より深く理解することにつながると考える。

また探究的に課題を解決していく過程においてもプログラミングを活用し、実際に「かたち」にしていく。利用者の感想を受けて自分たちで修正することができるため、課題解決を更に進めることができる。

今回活用したAIブロックは画像認識をScratchの拡張機能として活用できるもので、児童が学習させた画像認識をScratchの中のロジックとして利用できるもの。画像認識のための作業も、事前学習に時間をかけずに利用できる。

学習指導計画

総時数7時間
主な学習内容
1
7
1. 画像認識を体験して、日常生活に生かすことを考える
●    AIに画像認識のトレーニングをさせて、どのようなことができるか理解する
●    日常生活に生かす方法を考えることを課題に設定する
 
2. Scratchで、画像認識したものに言葉を付けるプログラミングをする
●    Google提供の動画等を利用して、AIが学習して画像を判断していることを押さえる
●    画像認識のトレーニングを体験する
●    Scratchのプログラミングを体験する
 
3. AIに色々なものを画像認識させ、言葉をつけるプログラミングをすることでどのようなことに活用できるか考える
●    自分で持ってきたものを画像認識でトレーニングして、Scratchのプログラミングをする
 
4. AIに多くのものを画像認識させ、言葉を付けるプログラミングをする
●    5〜10個程度のものをAIトレーニングさせる
●    どのようにトレーニングさせると上手くいくかも検討する(いろいろな角度から撮影したほうが認識がされやすい、枚数を多く撮ることが大切)
●    AIトレーニングしたものに言葉を付けるプログラミングをする
 
5. Scratchの音声合成を用いて、AIを生活の中にどのように生かすことができるか考える
●    Scratchで音声合成ができることを知る
●    どのようなことを音声で言わせたら生活の中で有効か話し合う
●    音声合成を自分のプログラムに加える
 
6. Scratchのリストを用いてプログラミングの仕方を学び、AIを生活の中にどのように生かすことができるか考える
●    リストのプログラミングの仕方を知る
●    リストを使うことで効率的なプログラミングができることを理解する
●    画像認識のトレーニングをして、リストを用いてプログラミングする
 
7. AIを生活の中にどのように生かすことができるか考える
●    どのようなプログラミングをすれば生活に役立つか
●    考えたプログラムに必要なAIトレーニングをする
●    作ったものを発表して、考えやプログラミングのよさ、誰にどのように役立つかについて意見交流する
 

 

実践報告

本時の展開(7/7時間)

本時のねらい

AIを生活の中にどのように生かすことができるか考える

展開

1.    どのようなプログラミングをすれば生活に役立つか、考えを伝え合う

目的意識をもって、誰に・どのように役立つかを設計して開発する

 

●    人の表情を認識して、表情に応じて励ましの言葉をかけてくれるものを作る
●    小学生の英語学習に使えるのでは?
●    公園に行ったときに、花の名前がわからないので、カメラで写すと教えてくれる

 

2.    考えたプログラムに必要なAIトレーニングをする。
それぞれ自分の考えた役立つものを作るためのトレーニングをする
自分で描いた絵や、図鑑や写真などを利用する


画像を読み込ませている様子
背景にいろいろなものが写り込むと認識が悪くなるので、白い画用紙をかぶせている

 

トレーニングした画像を使って、Scratchで目的とするプログラムのロジックを作る

●    これまでの学習で身に付けてきた、音声合成やリストなども活用してプログラミングできる見通しをもたせる

3.    できたものを保存し、友達同士、クラスの中で発表しあう
対象や目的を明確にし、どのようなプログラミングにしたかを説明できるようにまとめる

作ったプログラムを発表する

果物図鑑の画像をトレーニングすることで、果物の絵を読み込ませると、その果物の名前と旬の時季を教えてくれるアプリを作った
さくらんぼの画像を写すと、りんごと表示されてしまうことがあったが、他の児童からは「形や色が似ているから間違った判断がされたのではないか?」等の意見が出され、考えを交流した

 

4.    学習の振り返りをする
AIが判断して処理してくれるから、人の手間を省き効率的に活動できる

本単元で学習したことを価値付けて、今後の生活の中でAIや社会に目を向けることができるように意欲を高める

授業の振り返り

・単元の初めに、きゅうり農家やクリーニング店のAI活用事例を知ることにより、実際の生活が便利になっていることを実感でき、探究的に学習を進める原動力となった。
・AI、画像認識を使うことによって、児童の興味関心が大いに高まった。プログラミングの前に、まず、自分が読み込ませたい物を画像認識させる活動があることにより、主体的にコンピュータに働きかけている感覚を児童がもちやすいことも、興味関心が高まる一つの要因と考える。
・Scratchは既に体験済みであったため、学習に入るのはスムーズだった。単元に入る前に、前学年のときにでも、Scratch体験をしておくと「AI×プログラミング(Scratch)」が取り組みやすくなる。
・Scratchにエラーが出るときの対処として、1,再起動する。2,数字を半角に直す。3,AIトレーニングをしたときと同じ光量で画像認識させる。4,こまめに保存しておく。を知っておくと安心。
・コピーアンドペーストの仕方、ドラッグの仕方など、漢字変換の仕方、半角全角の切り替えの仕方など、プログラミング以前に身に付けさせておく基本スキルをクリアしておくとよい。
・目的意識、相手意識をもたせておくことが重要だと感じた。
・失敗を悪とせず、どうしたら解決できるか考えることが大切である。
・次年度は、さらに拡張機能「音声認識」なども加えて取り組ませることにより、自分たちの生活に役立てられる可能性を広げ、意見交流しながら修正を重ね、課題解決に取り組ませていきたい。

ワークシート

 

 

実践の概要動画(YouTube文部科学省公式動画チャンネル)

みらプロ2019「AI×スクラッチで、どんなことができるかな」~東京都町田区立町田第三小学校(協力:グーグル合同会社)での実践~

 

参考添付資料

実施事例の詳細(PDF)

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