インタビュー
公開日2018年8月29日
更新日2021年1月15日

きゅうり農家がプログラミング?!

プログラミング教育で実現される、誰もが身近な問題をプログラミングで解決する社会

きゅうり農家
小池
こいけ まこと

きゅうり栽培を行う農家の小池さんに、「仕分け作業」という自らの問題をプログラミングでどう解決しようと挑戦しているのか、プログラミングを誰もが学ぶ意義は何なのか語っていただきました。

未来の学びコンソーシアム事務局

何を作っているのかご紹介いただけますか?

きゅうりのハウス栽培を行っているので、収穫がない夏季以外は毎日きゅうりの収穫と出荷作業を行う必要があるのですが、私の様な家族経営の小規模農家だと、作業の一部を補助してくれる機材を導入することも難しく、全て手作業で行う必要があるので、大変です。

写真1

特にその中でも、きゅうりを大きさや形、色によって9つのカテゴリに分類する作業は、どんなきゅうりをどのこのカテゴリに入れるべきかという知識と経験が必要で、とても時間と人手がかかっていました。繁忙期だと、1日8時間くらいひたすら仕分けをすることになります。本当は、仕分けをいくらがんばってもきゅうりの品質そのものが向上するわけではないので、その時間はきゅうりの品質を上げる作業に充てたいんです。そこで2016年より、きゅうりの仕分け作業をサポートするシステムを自らプログラミングをして開発し、作業の効率化を図っています。

写真2

具体的に、どんなシステムなのかご紹介いただけますか?

はい。こちらがそのシステムになります。

写真3

きゅうりをこのディスプレイの上に置くと、カメラできゅうりを認識し、自動でどのカテゴリに仕分けられるべきなのかを教えてくれます。このシステムの良いところは、ただ作業の効率化が図れるだけでなく、例えば繁忙期にアルバイトの人を雇っても、このシステムがあればすぐに仕分けの作業をお願いすることができるようになります。これまではどんな色で、どんな形で、どんなサイズのものを…と事細かに説明しなければならなかったですし、作業者ごとに仕分けの基準が異なると困るので、経験がない人には任せることが難しい作業だったのですが、人間の経験をこのシステムで補うことができるようになりました。

なるほど、小池さん自身がきゅうり栽培の中で発見した問題を、自らプログラミングすることで解決していらっしゃるのですね!

そうですね。農家の実家に生まれ、大学でプログラミングを含めたコンピュータサイエンスを学んでいたとはいえ、きゅうり農家を2015年に継ぐまではきゅうり農家が日々行っている作業についてほとんど知らなかったんです。でも1年位見よう見まねできゅうり農家として働いてみると、「あれ、これはプログラミングでシステムを作れば解決できる問題なんじゃないか?」という場所がいくつかありました。その一つで特に時間を取られていた作業が仕分けで、2週間ほどで最初のバージョン(今のシステムは第3号)を3000円位で開発しました。それが予想以上にうまく動いたので、それから継続して時間を見つけてはプログラミングをしています。

2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されます。

最近は、浜松でも小学生や中学生を対象にしたプログラミングスクールみたいなものが増えてきて、地元でもプログラミング教育が盛り上がってきていることを感じます。ただ一方で、そういったプログラミングスクールのチラシを見るとプログラミングでゲームを作ろう、みたいなものしかないように見えるので、ゲーム制作も一つだけど、プログラミングは色々なものを作れるんだよ、自分の身の回りの生活を便利にできるんだよ、というのはもっと知ってもらいたいし、知ることができる機会は作っていくべきですね。きゅうり栽培も、プログラミングが活用できるもののうちの一つですけれど、これからさらに色々な物がプログラムで制御できるようになっていく中で、プログラミングできるだけで色々なことができるようになるはずなので。そういった意味では、農業に代表されるこれまでプログラミングが一般的にはあまり関係ないような分野で将来働く人がプログラミングを学ぶことはとても大事で、良いチャンスだと思っています。ぜひ、小学校で、その他の場所でプログラミングを学んで、面白いものを開発して、それを世界に発表してみてください。

小池
こいけ まこと

1980年生まれ。鳥取大学、静岡大学大学院卒業後、自動車部品メーカーにてエンジニアとして勤務。2015年より静岡県湖西市で家族経営の小規模農家としてきゅうり栽培を行う。2016年より、AIを活用したきゅうりの仕分け作業に挑戦している。
(役職名は記事公表時のものです)